【使ってはいけない言葉:「ムンテラする」(Mund Therapie 問診)】
ムンテラとは一般的には「問診」のことであり、「病状説明」という意味で使われることも多いが、「問診」のほうが広い意味なのでそう考えたほうが良いだろう。
元はドイツ語でムント・テラピー(Mund Therapie)の略で、Mund「口」+Therapie「セラピー、治療」だから、口述による治療といった意味のはずなので、使ってはいけないどころか、本来は大いに使うべきであり、やるべきことである。実際に上手く出来るかが問題だが。
しかし、なぜ使ってはいけないと言わざるを得ないのか?
昔、30年近く前にリハビリ系の大学教師をしていた時のこと。
(その頃は医学部ではなく医療技術短期大学部)
臨床実習(インターン)から戻ってきた学生が症例発表をしている時、「ムンテラする」という言葉を得意げに使ったので、叱責したことがある。
使ってはいけないし、やってはいけないことだ、考えるのもいけないと。
俺は優しいし滅多に怒ったりなんかしないが。
専門用語をよく分かっていないのに得意げに使うのは、どの分野でも大学の1~2年位の初学者にはよくあることだ。専門用語は定義が必要であり、使うなら誰にでもわかりやすく説明できなくてはならない。
この場合は、専門用語ではなく隠語だが。飲み屋や寿司屋で客が「おあいそ」などというのは皮肉だ。ピストルのことを警察はハジキと言い、ヤクザはチャカと言うのはドラマの中だけ?
サ変名詞では無いのに名詞に「する」をくっつけることはよくあるし、「〇〇る」などと言うのは便利なので特に悪いとは思わないし、私も割に多用する。
私が叱責したのは、その学生は明らかに「上手く言いくるめる」「適当に言ってごまかす」「事実とは違うことで患者を納得させる」「厄介な患者を言葉で支配する」といった意味で使っており、それが良くないことだという認識もなく、むしろ得意げでさえあったからである。
大学ではドイツ語はやらないし、教師もドイツ語は知らないし使わない。
おそらく実習先の指導者が使うのを真似したのだろうけど、その指導者は他のリハビリ関係者の真似をしたのかも知れないが、元は医者の真似だろう。日本の医療の中で歪められて使われるようになったのだと思う。
もちろん言葉はわかる、伝えるために使うので、問診なら問診、病状説明なら説明と言えば良いわけだが、あえてドイツ語を使うのは「俺はドイツ語も知ってるんだぞ」と言う優越感もあるかもしれないが、ドイツ語だと患者にはわからないからである。
わかってしまえば意図が見透かされ、悪行がバレてしまうのでそれを隠すためだろう。
実際にムンテラと言う言葉を使うかはともかくとして、そうした正確には伝わらない、あるいは誤解に満ちた、悪意が隠されているような、歪んだ言葉を駆使して「診療」するのは精神科医の得意分野である。
医者になった当初はそうでもないのかもしれないが、精神科医になって何年もしないうちにたいていの精神科医は「ムンテラ」の達人になる。
専門的な臨床能力はちっともつかないどころか退化して、精神療法どころか診断能力は甚だしく未熟なまま、というより誤解だらけのまま強化してしまう。
医者のレベルの差でもあればまだ良いのだが、どの精神科医も同じようなもので、どこの精神科病院や心療内科に行ってもちっとも埒は明かない。
患者が話しても結局の所、うんざりさせられるだけで患者もやる気がなくなり、病気の人というよりも障害者化する。それ以前に、精神医療、ひいては精神療法が無駄どころか反治療的なもの、有害なものとなってしまう。
医者は患者を上手く納得させたと思っていても、実際には納得していないことが殆どである。精神病患者だけでなく、認知症患者であっても。
逆に事実に基づいてわかりやすく言えば、理解に乏しいように見える患者でも割に納得してくれる。
肝心の、病気の原因や要因やその背景など、実際に病気に関することで治療に必要な情報は精神科医にとっては不要なのだろう。
要は、薬の副作用だろうが、(常用量)離脱症状、も後遺症も何でも元々の患者の脳の病気のせいにしてしに、それに対してまた薬を処方するということをやっているだけだ。
結局の所、話しても無駄だ、医者には話は通じない、ということになり、ひどい「医療」をやっていても、患者から文句も出ず、訴えられるなどの問題にもならない。
患者もそれで納得してしまうか、そうでなければ、話をするのも諦めてしまう。
結局の所、疾病について、自分についての洞察・理解も進まないどころか、隠蔽しごまかしてしまう。
精神科の診療は決して希望を与えず、絶望もしくは諦念を与える。多くの場合それが患者にも自覚されず当たり前になってしまい、悪質精神医療の擁護者、支持者にさえなっている。
そういう人の声はでかくてまかり通ってしまうが、他の患者にも社会にも有害だ。
ハッキリ言って現状の精神科医の仕事は素人でも少し学習すればできるし、何なら簡単なマークシートを読み込めるコンピューターと薬の自販機でも十分間に合う。その方が良いかも知れない。
標準的な処方や、薬の組み合わせの禁忌などは正確にデータとして入力しておけば。
医者はちっとも話を聞いてくれない。5分どころか3分も診療しないと不満を持つ患者も多いが、時間がたっぷりあったとして、話を聞くとしても世間話程度にしかならない。
世間話ならまだマシだし有用性もあるかもしれないが。
知らない人が多いかと思うけど、精神科医はカウンセリングや心理療法の学習やトレーニングをしていないのが普通で、そのようなことをやってるつもりの人も多いが殆どの人は不得手でやる気もない。
一般科でも検査や画像などのデータや所見を元に、自分の知識と照らし合わせて診療するだけで、患者の話をよく聞いて理解しようとしない医者が多い、というか殆どかもしれない。
先日も喉の違和感があり、紹介状を書いてもらって耳鼻咽喉科に行ったが、鼻のこと(アレルギーはある)のでそのことばかりで、どういう違和感か?などとは聞きもしない。
結局、効きもしない薬を処方するのだが、前に服用したことがあるけど効果は無かったとは言えなかった。
内視鏡で見たのに喉のことには全く触れないので、こちらから聞くと「何でもない、キレイなものです」と言うだけ。
喉頭がんの心配などはなさそうで、とりあえず安心したが、それでは問題は解決せず、もしかして食道の方に何か問題があるかと、不安は解消せず気になってしまう。
基本縦割りだから、仮に食道などに問題があっても、その医者は何の関係もないことになる。
というわけで、ムンテラとは本来は大いに使うべき言葉だが、とりあえず禁句にした方が良さそうだ、という話です。