歯科恐怖症

【歯科恐怖症】



歯科恐怖症について。

今まで特にどうということはなく歯科治療を受けた経験があるのに、歯科治療を受けるが不安で、恐怖になってしまう人もいますが、実際に歯科治療中にパニック発作、自律神経発作を起こして、めまい、冷汗、動悸、などに襲われたり、倒れたり失神した人もいるかと思います。
それがトラウマ(原因でなく誘因)になることもあり、またそうなるんじゃないかという不安が、実際に余計に不安発作を起こす要因にもなってしまいます。

そのような経験がなくとも、まだ若いのに歯科受診ができず、歯がボロボロになっている人も時々います。

歯科恐怖症の治療法、克服法

精神科・神経科や心療内科などの病院では、これといった治療法はなく、精神安定剤・抗不安薬等の向精神薬を処方されることが多く、他にはせいぜい、カウンセリングや認知行動療法くらいです。

薬物ではまれには改善しても一時的でしかなく、根本から改善しているわけではないので、また症状がぶり返してしまうだけでなく、ますます改善困難になってしまいます。それで症状改善になったとしても、自分で克服したことにもならないため、自信になるどころかますます自信喪失になり、それが薬物依存症にもつながることが多いのです。
向精神薬依存には身体的依存も心理的依存もあります。


練習・訓練・シミュレーション

やはり何事も逃げてばかり、避けてばかりでは先に進まないし、余計に不安や恐怖をつのらせてしまい疑心暗鬼になってしまい、克服の道はますます遠ざかってしまうことは皆さんお分かりかと思いますが…

ここでは自己訓練法、練習法についてお伝えします。
こういうことをお伝えしても患者さんは嫌がるし、否定的に考える人が多いと思いますが、実際に練習、シミュレーションをしてみるのが良いです。

嫌なことほど練習や準備、訓練をせずますます苦手になってしまうのは神経症の人の常です。あがり症、緊張症の人はますます話すのが苦手になってしまい、実際にあがらなくても話がうまくない人が殆どです。

今どきの歯科は殆ど寝た状態で治療を受けますから、実際に寝転んで行うのが良いと思います。
まず、「リラクゼーション」の章の「自律訓練法」を行うのが良いです。
そちらをご参照ください。

・なるべく全身の力を抜いて寝そべった状態で、とにかく力をなるべく入れず口を開けている。
口はなるべく大きく開けますが、顎の力はあまり必要ではなく、なるべく力は入れないようにする。
(慣れれば1時間でもどうということはなく、普通の人はできます。自分が人の形をしたビニール袋に水が入った状態、大地(地球)と一体になった自分、などとイメージするとやりやすいかもしれません)

・口を開けたまま、舌で喉の前の部分は閉じておき、鼻呼吸をする。
(普通は歯科治療の最中はこのようにしているはず)

・舌の根元を少し動かして、気道を確保し口呼吸もしてみる。
(要するに舌や喉、顎、口の周りの筋肉をなるべく上手く使えるようにする練習も必要)
 力はなるべく抜くいて、必要以上には入れない(必要最小限)。

・この状態で唾液が出てくるが、そのまま喉の奥に唾液をためておく。
(実際の治療中にはバキュームで吸引してくれるが)

・喉の奥を閉じたまま、唾液を飲み込むような動作を喉周囲だけで行う。
(実際には飲み込まず唾液は喉の奥に貯めたまま。この動作は治療中は必要ないといえばないが、喉周囲をリラックスさせるためにはできた方が良い)

・口を大きく開けたまま、唾液を飲み込む
(実際の治療中はバキュームで吸引してくれますが、このような動作が必要な場合もあるかもしれない。できると心理的にも余裕が生まれます)

・口を大きく開けるときはなるべく唇も大きく開くが、口角に力はなるべく入らないようにする。

・口をあまり開けず、唇のみ大きく開く。前歯から糸切り歯からさらに奥の歯をむき出しにする。この時もあまり口角に力は入れないようにする。(前歯の治療の時などは必要)

・これらのことはなるべく全身の力も抜いて、呼吸も楽にゆったりしながら行う。

こうしたことは、普通の人は特に苦手ではなく難なくできるはずですが、歯科治療を受けるのが苦手な人は、あまり上手くできないと思います。

歯科恐怖には心理的な面もありますが、それにともなう身体的な面、身体の問題、身体のコントロールの問題も伴っています。(この場合は特に口から舌、喉ですが)

緊張症、神経症(恐怖症も含む)の人は、身体的にも緊張が強く、無意識的不随意的に力が入ってしまうことが多い反面、力を入れことも抜くことも苦手で身体コントロールが上手ではありません。

基本的にはリラクゼーション(要するに力を抜いて神経の働きや状態を落ち着けると精神的心理的にも落ち着いてくる)と、力を適度にうまく入れることの両方が必要ですが、緊張症の人はどちらも上手くないのです。

こうした訓練・練習、シミュレーションはいろいろなことにも応用が利くし役立てることができます。運動や様々な動作、スポーツ、楽器を弾く、作業など、それぞれに応じた基本的な訓練や練習を行うと良いと思います。

訓練・練習そのものがうまくいかない人もいるし、やっても無駄な努力、余計に自信を無くして落ち込んでしまう人もいるかと思います。

また上手くできるようになって、歯科恐怖症は克服できたとしても、緊張症、神経症の人は他にもさまざまな症状があるはずです。

やはり、リラクゼーションが上手くできるようになるためにも、基本的な治療は必要です。
歯科恐怖症に限らず、緊張症、神経症の克服のためには、やはり根本から改善する治療法と同時に、ストレスの多い難しい環境にも適応できるような心身の技術も身につけるのが良いと思います。