【心因性、神経性、緊張性の頻尿症】
心因性、神経性、緊張性の頻尿症
頻尿症の症状
頻尿症とは文字通り頻回にトイレに行って排尿せざるを得なくなる疾病です。
頻尿症には膀胱や尿道周囲、あるいは排尿に関係した神経系の疾患など、身体的な原因のある器質性のものと、心因性(神経性)のものがあり、当所の催眠療法の対象になるのは心因性(神経性)の頻尿症のみです。実際にはその方がはるかに多く、ここでも心因性(神経性)の頻尿症についてのみ焦点を絞って記述します。
例えば中学生の頃、寒い時期、体育館での卒業式など、トイレには長い時間行けず、途中で退席するもの恥ずかしい、先生や同級生から何か言われそうだし…
前の日から水分は控え、もちろん始まる前にトイレに行ったのに、始まってまだ10分しか経っていないのに、もうトイレに行きたくなり困った、といった経験のある方は多いはずです。
多くの場合、思春期の頃の一過性で終わり、大人になってからはさほど問題がなくなる場合が多いのですが、大人になってからもその傾向が続く人も少なくありません。
心因性(神経性・緊張性)の頻尿症・排尿困難は神経そのものや膀胱など排尿器官に器質的な問題があるわけでなく機能的な疾患です。
神経性の頻尿症・排尿困難は独立した疾患として存在することはありません。
身体症状として現れる問題でも、身体疾患ではなく精神疾患であり、神経症・緊張症の合併症です。
神経症とは神経の病気ではなく、精神的な問題(特に無意識の不安や緊張など)が神経に影響し体の症状として現れる、神経の状態や使い方が上手くない、より正確に言えば無意識による神経の使われ方が良くない、という状態になっているということです。
頻尿症に限らず、神経症、自律神経失調症は心因性(神経性)であり、主な要因は心理的、精神的緊張です
1)強迫行為としての頻尿症
実際に尿が溜まっているわけではなく、尿意があるわけでもないのに、しょっちゅうトイレに行かないと気が済まない。この機会にトイレに行って置かないと、しばらくいけなくなくなるかもしれない、という不安もあるし…。強迫行為、強迫観念は過去の不安が要因であり、過去は変えられないので、実際に失敗体験がなくても大丈夫だと頭では思っていても、克服することが困難です。
2)膀胱や腹部の筋緊張が強い場合の頻尿症(過活動性膀胱)
尿意があるときお腹の部分を少し手で押すと余計に尿意が強くなりますが、同様に膀胱や腹部の緊張が強いとさほど尿が溜まっていなくても尿意を催します。このように実際に膀胱が緊張し、収縮しようとする状態が過活動性膀胱と言われ、長期にわたると蓄尿できる量も少なくなってしまいます。
3)自律神経失調症としての頻尿症
心的緊張により過度に利尿促進され、実際に短時間で尿が溜まってしまう場合です。さっきトイレに行ったばかりなのに10分も建っていないのにまた大量に溜まってしまう。尿崩症などの身体疾患とは違って、それが何度も続くわけではありませんが…
心理的・精神的な緊張が強い時に、脳の中で脳下垂体後葉の働きにも影響し、そこから分泌促進されるはずの抗利尿ホルモン(バソプレッシン)の分泌の抑制されてしまい、逆にアルコールやカフェインを摂取した時のように、過剰に利尿が促進されてしまいます。
頻尿症の方は1) ~3) のいずれかのタイプに属するというよりも、いずれかの傾向の強弱はあっても、それぞれが重なっているのが普通です。
神経性・緊張性の排尿困難
頻尿症の人は緊張性(神経性)の排尿困難や腹部神経症、緊張すると下痢しやすいなどの症状(過敏性腸症候群)も伴うことが多いです。排尿困難については「排尿困難」のページをご参照ください。
頻尿症の原因(誘因としてのトラウマと原因となるトラウマ)
排尿はできて当たり前のようですが、意外に難しいことです。
尿意の感覚は目で見て確かめることもできないので、精神的心理的な状態に影響されやすく、不安や緊張が強いとあやふやなものになりがちです。
誰しも生まれたときから排泄のコントロールできていたわけではありません。トイレが自立するまでは失敗することもあり、幼稚園・保育園や小学校低学年の頃にはおもらしする子もまだ多いのです。
行くべき時にトイレに行くということもある意味難しことですが、普段からリラックスできている人はそうそう短時間でトイレに行きたくなったり尿が満杯に溜まることはないし、膀胱や腹部がリラックスできていればかなりの量を蓄尿することができるのですが…
誘因としてのトラウマ
例えば、私が子供のころの実話ですが…
小学校2年の時、給食当番で配ぜん中の女の子がおしっこを漏らしてしました。私の目の前でスカートの中から水が降ってきたようにしか見えず、何が起こったのかわからず、しばらくしてようやくオシッコを漏らしたことがわかりました。可愛くて賢くてしっかりした子だったので、そんなことする子には思えなかったという先入観があったからでしょう。
まじめで責任感が強い子なので、給食当番中にはトイレに行くわけにはいかない、自分の責務を果たさなければと頑張っていたのでしょう。トイレに行くなど言い出したりその行動をとるのは抵抗があったかもしれません。
しかし彼女の場合、頻尿症にはなっていないはずです。(40数年後に同窓会で会っていますが相変わらず美人で聡明な人でした)
当人が悪いわけではなく、親や教師や子供とは自分でも、いえ周りのクラスメイトもそれがわかっているので、自己価値観を貶めたり傷つくことは少なく、それがあっても克服・修復可能なのです。
その女の子に対してはは責任感のある真面目な子だなと尊敬の念さえもったことは記憶に残っており、多くのクラスメイトも同様だったのでしょう。バカにしたりからかったりする人がいた記憶はありません。
こうした失敗体験も家庭環境など悪くなければ、記憶していてもそう苦にはならず、克服可能であり特にトラウマになるわけではないのです。しかし、家庭環境や親の対応、育て方に問題が大きい場合は、(原因ではなく)誘因としてのトラウマになることが多いのです。
まだ小学校1~2年ではオシッコを漏らすのはそう珍しいことではありません。もっと年齢が上がってからの失敗体験は誘因トラウマになりやすいですが、その場合すでに神経症的問題がある場合が多いのです。
原因としてのトラウマ(心的外傷)
頻尿症などの神経性の身体症状の要因は心理的な緊張、ストレスですが、やはり幼児期からの環境、親・養育者のしつけや対応が影響しており、それがトラウマ(心的外傷)場合が殆どです。上述のようにある程度の年齢になってからも失敗しておもらしした時の体験が、後に影響することもありますが、大部分がまだ覚えていない幼児期からの影響です。
子供の頃、ようやくオムツが取れてもまだ失敗することも少なくないはずで、排尿に関する過度に厳しいしつけや、抑圧・干渉的な対応、やさしく見守って教えたり躾けなければならないときにも過度に厳しく罰し、子供の時に傷ついた体験などが後に大人になってからも影響します。
親自身が心配性だったりセルフコントロールが苦手だと、子供の不安を和らげて安心させてあげるべき場合も、そうした対応が苦手であったり、余計にプレッシャーをかけて緊張させたりすると子供にも不安や緊張を与えてしまいます。しかし多くの場合、無自覚もしくは否認していますが。
そうした親の対応により、親の不安や心配が乗り移って催眠術にけられたように、子供自身も不安になり、また自分自身が不安や緊張をコントロールしてリラックスするというセルフコントールが身に付きにくいのです。
幼児期のしつけや養育過程は、子供にとって生涯続く催眠をかけるようなものです。
頻尿症の人の場合、特に幼児期のトイレットトレーニング時の親の不適切な対応により、トラウマ(心的外傷)の影響が出る場合が多いようです。広い意味では神経症でもあり、PTSD(心的外傷後ストレス障害)という面もあります。
よくトラウマ(心的外傷)という場合、原因としてのトラウマよりも誘因としてのトラウマを問題にしやすいですが、他の神経症症状と同様に、やはり主な原因は幼児期の覚えていない、もしくはわからないトラウマが大部分であり、過去のショックな出来事や傷ついた体験が無意識に影響し、思春期あるいは大人なってから問題が出てるる場合が多いです。
頻尿症の治療法
身体的要因のある頻尿症や排尿困難の場合は、泌尿器科などの病院を受診することが必要であり、その場合は当所の治療の対象外ですが、そのような人は高齢者を除けば僅かです。
原因がわからなければとりあえず病院で見て貰うのも必要かもしれませんが、身体的な問題のない場合が多く、その場合は泌尿器科や神経内科では扱われず、精神科や心療内科を勧められます。
しかし精神科・神経科や心療内科などの病院では、これといった治療法はなく、精神安定剤・抗不安薬等の向精神薬を処方されることが多く、他にはせいぜい、カウンセリングや認知行動療法くらいです。
薬物ではまれには改善しても一時的でしかなく、根本から改善しているわけではないので、また症状がぶり返してしまうだけなく、ますます改善困難になってしまいます。
精神安定剤・抗不安薬等の向精神薬は特に依存性が強く、特にベンゾジアゼピン系抗不安薬は心理的依存だけでなく、身体的依存性も非常に高く、離脱症状も強く、長期服用の安全性は確かめられていません。
しかし、服薬を止めてしまうと、余計に不安になってしまい、結果的には症状もぶり返しすだけなく離脱症状があり心身ともに苦しくなることも多いので、あたかも治療効果があるかのように錯覚してしまいます。
また、薬を飲まないとダメ、という心理的依存も形成しやすく、表面的な効果さえないのに薬が止められない、という方も多いのです。
基本的には悪化するばかりでなく、薬害性の神経障害も引き起こしてしまうので、そのような精神科病院や心療内科は受診たり服薬はしない方が良いです。これはもちろん頻尿症だけでなく、不眠症、自律神経失調症,心身症(身体表現性障害)、更年期障害、など精神的緊張などの問題から来たす身体症状に関しても同様です。
頻尿症の人は頻尿ばかりを気にして、他の症状はないと思う人も多いのですが、実は他の症状の方が大きく深刻であることはよくあることです。神経症には多種多様な症状を併発していることが普通で、頻尿症も神経症の症状の一つであり、精神疾患の合併症ととらえることも必要です。
体の病気でいえば痛みだけが気になる、患者さんの主観ではそれだけが問題と考えてしまうこともありますが、痛みだけが病気の症状ではなく、痛みそのものが病気でもないし、痛み止めだけでは病気は良くなりません。痛みには原因があり、なるべく原因に即した治療が必要です。
改善のためには「急がば回れ」ということも必要です。頻尿という症状だけにこだわるより、人と同じ時間と場を共有できる、その場でリラックスしていられる、相手を安心させる、緊張させない、楽しく有意義な話ができる、ということに努力したほうが、結果的には頻尿症の克服のための自信にもつながります。
基本的には精神的にも身体的にも緊張が強く、その影響も色々ありますが、頻尿もその一つということです。従って「急がば回れ」という発想も必要であり、例えば運動や感覚面など、色々な面からの治療が必要です。
頻尿症や人は、腰回りの緊張も強く、腰痛やヘルニアなどの器質的な問題にもなりやすく、あわせてその対処や予防も必要です。
神経をムダに使わないこと、すなわちリラクゼーションと同時に神経をうまく使えるようにすることが必要であり、ヨガ・座禅などから古今東西様々な方法があり現代では一見百花繚乱状態ですが、それらの方法は実践が難しいか、あまり効果がなく効果があっても一時的である場合が殆どです。
頻尿症に限らず、神経症、自律神経失調症の克服のためにはやはり根本から改善する治療法と同時に、ストレスの多い難しい環境にも適応できるような心身の技術も必要です。
当所の提唱するセルフ・セラピーでは頻尿症の方も短期で改善可能です。心因性、環境因・心因による神経性頻尿症や排尿困難の方は実践してください。
精神科や心療内科などの病院・医療機関や、他の催眠療法(ヒプノセラピー)、心理療法、カウンセリング、代替療法などを受けても改善できなかった頻尿症の方も改善可能です。