【あがり症】
一般に精神医学・精神医療では、あがり症という言葉は使いません。病院に行くと、性格的なものだからあまり気にしないように、誰にでもある、と言われるだけだったり、病気ではないと言うにもかかわらず、気休めに抗不安薬など精神安定剤やSSRI等の抗うつ剤を処方されたりします。
人前で話すときなど、動悸がしたり、声や身体が震える、冷や汗をかく、赤面する、表情がこわばる、などの「人前で緊張してあがってしまった」といった体験は誰でもありますが、あがる程度や頻度がひどく、またそれを極度に恐れ、そのような状況を避けてしまうようになると、日常生活や仕事に支障をきたします。
あがり症は、対人恐怖症・対人不安のうちとも言えますし、程度はともかくとして神経症ということもできます。
あがり症の方は、人前で話したりするときに緊張して上手く行かなくなってしまいますが、普段も(リラックスしているつもりの時も)普通の人よりも緊張が強く、呼吸も固く、ほとんどの人は肩こりもひどかったり、背中の緊張も強く、姿勢が悪かったり歪みもあります。心理的な緊張が身体にも現われているわけです。あがってしまった時ばかりではなく、普段の表情も硬く、発音・発声も多かれ少なかれ、あまりよくありません。
あがり症の方は、赤面症(赤面恐怖症)、吃音症(どもり)、発汗症や自律神経失調症、会食恐怖症、書痙、なども伴っている方が多いです。
あがり症には精神科、心療内科などの病院・医療機関ではペンゾジアゼピン系の抗不安薬(ソラナックス、デパス、ワイパックス等)などの向精神薬が処方されることが多いです。殆どの人には有効ではなく、効果はあっても一時的に不安を抑えるだけで、基本的は逆効果であるにもかかわらず、副作用もあり、依存性や危険性が非常に高いです。ある程度の期間、服用すると止めても激しい離脱症状が起こることが多く、服用するのも服薬を中止するのも危険になってしまいます。SSRIなどの抗うつ剤も基本的には同様です。
あがらないように、緊張しないようにと考えても、対策にはなりません。なぜ、あがるのか、具体的に問題を解決していくほうが得策です。
やはり人前でうまく話せない人は、普段もあまり話すのが上手くはないし、声も上手く出ていません。自信を持って堂々としたいなら、それだけの実力をつける必要があります。実力がないのにカラ自信ではうまくいきません。そういう図々しい人もいますが、それは別の症状です。
苦手なことは、それを練習や訓練によって克服することも避けがちになってしまいますが、それ以前に何がどう上手くないのか自覚することも難しいのです。
そのためにはやはり、神経の状態や使い方を改善させることが必要です。