『生活習慣病としてのうつ病』 井原裕

『生活習慣病としてのうつ病』 井原裕
井原裕さんのことに関しては、今までに2回ほどふれた。
精神科医療批判は国民の義務 『医原病としてのうつ病』 井原 裕 精神神経学会
『双極性障害と病気喧伝(disease-mongering)』 井原裕
井原裕さんは「今が旬の精神科医」なのでしょう。
この本は従来の「インチキうつ病本」とは一線を画すもので、とりあえずすべての精神科医や患者さんは読んだ方がいいと思います。
私は買って後悔しましたけど。貧乏なので。同じ金出すなら、「ピート・タウンゼント自伝」の方が良かったなぁ。文字数も数倍だし。
「うつ病は心の風邪、誰でもなる」「うつ病は服薬して休養すれば治る」「早期発見、治療が大事」「うつ病は脳の病気、セロトニン不足」「抗うつ剤等の抗精神薬は安全、副作用も少ない」「もしかしてうつ病ではなく双極性障害?」といった、従来のインチキうつ病本は、もはや書店でもあまり売っていません。
精神科医は相変わらずそのような本を出したがっても、出版社は出したがらず、本屋も売りたくないのだ。曲がりなりにも文化の担い手としては、嘘だらけ間違いだらけの本を売ることに、精神科医ほど無責任ではいられない。
医者も文化の担い手であるとしても、精神科医もそうだとはおせじにも言えない。
どちらかと言えばテレビ、ラジオ、新聞などのメディアは相変わらず「うつ病キャンペーン、病気喧伝」の反省なし、というより相変わらずそれを続けていますね。アベノミクスと同じか。
この本は、大型書店などでは大量平積みの所が多く、本屋の売り込みたいという意思も感じられる。一応、専門書としてはかなり売れるだろう。

生活習慣病としてのうつ病
弘文堂
井原 裕

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けっこう適確に精神医療の現状をふまえた上で書いている。
基本的に精神科医擁護、精神医療温存のスタンスは崩さず、精神疾患に対する無理解か、戦略的レトリックか?というところは前にも触れたように多々ある。あえて「うつ病」を前面に出すのも、その一環だろう。
精神医療救済のポーズをとって、指針を示し、主導的な立場を確保しつつ、反精神医療の攻撃をかわして弁護するといったところか。
このままでは自分たち「良心派、常識派」も他の精神科医と一蓮托生になってしまうという危機感が見て取れる。
「薬を使わない精神医療」を標榜しているようだが、実際はどうだか?
せいぜい、常識の範囲という程度にとどまっており、もちろん特に治療法をもっているわけではない。ほとんど睡眠の話だし。睡眠はもちろん重要だが、必ずしも適切な内容でもない。
ハッキリ言って、専門家が読むような内容は無く、町(村)医者やかかりつけ医や、一般健康本として患者が見る程度のものだと思う。
精神科医を専門家、プロとは見做せないのが前提という事ではあろう。 
全く治療ができていない、精神医療の現状を踏まえた上での苦肉の策だろうし、井原裕さん自身も「療養指導」と書いている。
うつ病等の精神疾患(PTSD)は生活習慣の問題もあるのが普通だが、もちろん生活習慣病とは言えない。原因が生活習慣ではなく、トラウマ、ストレスであるからである。
井原裕氏が提示するような生活習慣病としてのケア、生活習慣の見直し、「療養指導」は、必要有効な面もある。
「服薬と休養」の服薬はもちろん有害であるが、不適切な「休養」もまた有害であり、悪化させる要因となってきたことを考えると、なおのことである。
生活習慣病としてのケア、「療養指導」は悪いわけではないが、基本的は治療ができないための逃げ、治療不在の苦肉の策であるばかりでなく、しばしば心的外傷促進的になりうることも危惧される。
「不節制な生活をしてるから病気になるんだ」などと、親や教師、職場の上司などが患者を責めるのは、トラウマに塩を擦り込み悪化させる古典的なパターン、多くは親の自己正当化、無意識の開き直り。
うつ病等精神疾患を生活習慣病とらえることは有効な面もあるが、生活習慣が悪いから病気になる、と循環論法、本末転倒になりがちである。症例を見ても誤診と思われる例も散見される。
行っていることは治療ではなく、「療養指導」である。
この精神科医ならもしかして、かからないよりかかってもいいのかもしれない…かも。ではあるけれども。
それでも現状のほとんどの精神科医よりはるかにマシである。
多くの場合、精神科医は悪化させているだけなので。
もう少し正確に言えば、精神疾患に薬害性の中枢神経疾患を付け加えているだけ。
「効果」とされていることも、副作用(もちろん作用)も離脱症状も後遺症も含めて。
私にとっては目新しいことは何もないが、後つけて来てるな…、ちょっと追われている感じ。
ほとんどの内容はずいぶん昔から言ってたことでもある。
仲間として接近しているのかもしれないが。もちろん当方のことは知らないはず。
うつ病等精神疾患に対して「生活習慣病としての精神疾患のケア」ではもちろん不十分であり、治療法を持たずに「薬を使わない精神医療」「療養指導」というのは小刀で大木を切るが如し、あまりにも無理があり、有効性に乏しい。
井原裕さんのような方が真剣に治療したいと望んでいるとすれば、喉から手が出るほど欲しているはずの治療法を当方では行っています。
伝授するとすれば、もちろんいろいろな条件はありますが。
約20年前から施療しており、何人かの精神科医に教えてくれと言われたことはありますが、今までの所、企業秘密。
中井久夫さんでもいいけど、もう歳だしね。北山修さんでもいいけど。
フロイトやユングやサリヴァンなどに伝授できたとすれば驚喜するだろう。
もしかしたら抵抗を示すかもしれないが。
半端な分析家や精神療法家なら当然、抵抗するだろう。否定、否認
高慢、不遜に思われるだろうけど、心外というより論外。
生物学的精神医学に進歩の道はなく、治療に近づくことさえありえず、今後もあさっての方向に行くしかない。と言うか、おととい来やがれ!である。
人類の知性や英知、天才的な洞察や理解が治療に結びつくことはありうるが、科学技術がいくら進歩しても治療に近づくわけではない。
心の自由、魂の開放、精神の救済をめざすことない現状の精神科医が治療にたどり着くことは、これかちもありえないし、誰も用はないだろう。

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