病気喧伝(疾患喧伝) disease-mongering という言葉が、話題になっています。
他にも書いたように、もちろん私にも昔から、こうした概念はあったのですが、この言葉を聞いたのは初めて聞いたのは最近です。
研究社 新英和中辞典だと、mongerは、
1…商人,…屋.
2《軽蔑》 つまらないことを世間に広めようとする人,…屋.
war-mongering だと、「戦争挑発」という意味のようです。
病気の売り込み行為ということですね。病気喧伝(疾患喧伝)というのは、とりあえず適切な訳語だと思います。
欧米では既にこの言葉は広まっており、学会等でも話題にはなっていたようです。
「疾病啓発キャンペーンが健康人を病人に変える」
http://www.yakugai.gr.jp/attention/attention.php?id=123
これまで盛んに行われてきた「うつ病キャンペーン」は、
病気ではない人を、病気だ病気だと言って、病院に行かせり、薬物を売ったり医療行為を受けさせ、
企業や病院、医師が、利益を得たというより、
重症でもない人を「うつ病は誰でもなる、早期受診、服薬すれば治る」として、精神科や心療内科を受診させ、
治るどころか良くならずむしろ悪化させ、有害で危険な抗うつ剤等よる向精神薬害、
自殺増加、薬物中毒、依存症を広め、仕事や生活もさらに支障をきたし、
傷病手当、障害年金、生活保護などの社会保障費用も増大させるなど、
多くの社会的損失も拡大させてしまった。
そのことより、製薬会社、精神科、心療内科などの病院や精神科医は巨利を得ることに成功した。
こうした意味で、悪質な病気喧伝(disease-mongering)になると思います。
今年11月に開催された、「第107回日本精神神経学会学術総会」でも「今日の新たな病気と精神医学:disease-mongeringを超えて」と題したシンポジウムがあったようです。
他にも、以下のようなテーマのシンポジウムも行われたようです。
「向精神薬の過量服薬、自殺企図を巡る諸課題」
「抗精神病薬の多剤大量投与はどう認識されているか」
ようやく、まだまだこれらかとは言え、一部の精神科医の間では反省モードの気運がわずかながらも徐々に高まりつつあるようです。反省モードより言い訳モードの方がずっと強いですが。
精神科医は、良心と正しい認識を取り戻すことができるのでしょうか?
「うつ病キャンペーン」10余年、精神科医も製薬会社の宣伝に、騙し騙され、踊り踊らされてきたわけですが、通院して服薬しても誰も良くならないことに、国民の多くも気づきつつあります。
精神医療に対する不満や、不信、抗議の声に対し、「そんなことも知らないでやってたわけでないよ」といった言い訳や、懐の深い所を示そうとしているのか、ガス抜きという意図もありそうですが、もはや批判の声を全く無視することができなくなったのは確かでしょう。
また「第107回日本精神神経学会」では、disease-mongeringという、言葉が使われた演題も発表されたようです。
※画像はクリックすると大きくなります。
双極性障害と病気喧伝(disease-mongering)
獨協医科大学 越谷病院 こころの診察室 ○井原 裕
※全文はこちら
https://www.jspn.or.jp/journal/journal/pdf/2011/12/journal113_12_p1218-1225.pdf#search=’%E4%BA%95%E5%8E%9F%E8%A3%95+%E5%8F%8C%E6%A5%B5%E6%80%A7%E9%9A%9C%E5%AE%B3′
しかし、読んでわかる通り、まだまだ手前味噌、精神医療業界の自己弁護、自己保身に終始する傾向にあります。
一昨年あたりから、ネット上でも双極性障害キャンペーが盛んに行われてました。(テレビ等、他の媒体のことはよく知らないのですが) 実際には双極性障害(躁うつ病、循環型精神病)の人はものすごく少なく、今日双極性障害と考えられる人は、元々うつ病でも無い人、もしくは軽症の人が、抗うつ剤を服用して躁転したり、常用量離脱症状が起こったりしたためであり、ほとんど薬害です。
患者だけでなく、一般の人も、一部の精神科医も「うつ病は薬で治る」と宣伝しておいて、結局、良くなるどころか悪くなっている、ということに、気づき始めています。
これに対し製薬会社や精神科医は、『「うつ病」なら抗うつ剤で治るはずだが、「双極性障害」なので治らない。それは薬のせいではなく精神科医の誤診のせいである』と言い訳したいようです。
しかし、「うつ病キャンペーン」により、せっかく捕まえた患者から(実際には大部分は保険から、すなわち健康保険負担者からだけど)多くの利益を得てきたので、それを手放さないようにするための喧伝でしょう。
もちろん、うつ病でも双極性障害(躁うつ病)でも、向精神薬で良くなることはありません。
製薬会社と精神科医の罪のなすり合い、という面もあるかと思います。「うつ病キャンペーン」では、両者協調して、巨利を得ることに成功しましたが、徐々に精神医療と製薬業界も少しずつ乖離しつつある印象です。
なかなか現実は変わらないと思いますが…
また、一方では
「お父さん眠れてますか?」
「ちゃんと眠れている?」「2週間以上の不眠はうつのサインです」「つらい時には相談しましょう」
といった不眠症キャンペーンも盛んです。
電車の中の液晶掲示板では2年ほど前から、しつこく繰り返されています。テレビでやっているのかは知らないのですが、ねっと上でもしつこく広告が出されています。
うつ病から不眠症(睡眠障害)に、喧伝の比重を移したようです。もはや、うつ病キャンペーはやりつくしてしまい、宣伝 対 効果の、コストが飽和状態に達し、これ以上は逆宣伝になってしまうからでしょう。
もちろん、睡眠薬、睡眠導入剤で不眠症(睡眠障害)が良くなるわけではありません。眠らせるクスリ、というより意識障害を起こさせる薬で、依存性も非常に高いので、やはり危険です。
2007年、静岡県富士市はモデル事業として、不眠、うつ、自殺対策を行ったことがありますが、結果は予想通り惨憺たるものでした。事業が実施された1年後の2008年には、自殺者の数は前年比37%増。そして、その後も確実に自殺者の数は増えています。
http://homepage3.nifty.com/saio/suicid-prevent-JSMD2010.pdf
それまで富士市は自殺者の数は減少傾向にあったのに、このキャンペーンを実施した途端に自殺者が増えてしまい、もちろん受診者はうなぎ登りに増えた、というより増やしてしまったのです。
「不治モデル」とも言われ、悪評を残しましたが、行政や医療機関、精神科医はこのキャンペーンを「大いに成果があった」、「大成功!」と捉えています。
何をもって成果を判断するのか? もちろん自殺者の数ではなく、病院受診者の数です。
誰も歴史から学ばない…のだが、金儲けの方法だけは学習するのでしょうか。
『生活習慣病としてのうつ病』 井原裕
精神科医療批判は国民の義務 『医原病としてのうつ病』 井原 裕 精神神経学会